師匠:趣味と実益を兼ねるって言葉があるだろ?
弟子:ええ、ありますね。趣味と実益を兼ねて英会話とか。
師匠:それ、おかしいと思わない?
弟子:いえ、特に。
師匠:だってさ、実益を兼ねたら趣味じゃないじゃん。
弟子:なんで?
師匠:趣味っていうのはね、実益なんかを兼ねたらいけないんだよ。
弟子:またおかしな一家言ですか?
師匠:あのね、趣味っていうのは身になってはいけないんだってば。
弟子:いいじゃないですか、別に。
師匠:いや、ダメなのだよ。
弟子:だからなんで?
師匠:実益を兼ねたコトってのは必ず崩壊する日がくるものなのさ。
ふふふ。
弟子:なるほど。それは分かるような気がする。
師匠:だから、自分が最も無防備でいられるコトやモノがいいね。
弟子:うんうん。
師匠:一見意味不明な事のようでも本人にとっては非常に密な
時間を過ごせるものでなければ。
弟子:なんだか難しいですねー。
師匠:つまり、趣味ってのは他人にとっては全く理解出来ない
もののほうが好ましいね。
弟子:例えば?
師匠:新聞の折込広告を細かく折って壺を作るとか……。
弟子:………………。
師匠:全国のご当地産の牛乳瓶を集めて並べて眺めるとかさ。
弟子:……………。それ、師匠でしょ。
師匠:な、意味不明だろ?
弟子:うん。意味不明だ。
師匠:ところが、本人はものスゴク満足してるんだよ。うっとり
だよ。うっとり。
弟子:はぁ。
師匠:要するにだね、趣味ってのは他人に対しての理由なんてい
らないんだよ。
弟子:そりゃそうかもね。
師匠:自分が満たされればそれでいいワケ。
弟子:で?
師匠:で、だ。ここではこっそり所有しているコトで喜びを満喫
できる物を紹介しようと思うよ。
弟子:なんだ、商売がらみですか。そうですか。
師匠:商売柄というかなんというか、予期せず変わり種が手に
入ることがよくあるんだよ。
弟子:あー、ありますねー。「どうすんだこれ?」ってのありま
すよ。
師匠:言ってる意味がわからんな。
弟子:はい、すみません。
師匠:これらに結構高いハードルを付けてみたんだよ。
弟子:どんな?
師匠:1.簡単には手に入らないモノ。(novelty=変わり種)
弟子:うん。
師匠:2.特定の人に幸福な時間をもたらすモノ。
弟子:うんうん。
師匠:3.万人には理解されないモノの3つ。
弟子:それがこれなんですね。条件は満たしていると思います。
十分。
師匠:例によって情報量は少ないぞ。
弟子:あはははははははははははは。じゃぁ、知ってるだけでい
いから紹介してよ。
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弟子:なんなんです?
師匠:1981年に東京コカ・コーラが25周年を迎えた話は覚えてる?
弟子:うん。
師匠:その時の記念ボトルを買うと付いてきたモノだね。
弟子:へぇ、景気良かったんですね。高級感が漂ってるよ。
師匠:箱は当然痛みがある。でも、箱付きはレアだよ。
弟子:何種類あったの?
師匠:3種類だと思う。
弟子:ふーん。記念ボトルはコンビニ販売?
師匠:ばーかめ。当時はコンビニも携帯もなかった頃なのだよ。
弟子:考えられませんね。どこで売ってたの?
師匠:酒屋さん。
弟子:酒屋??? ………そうか……。そうだよね。酒屋さんが
妥当だよね。
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師匠:インスピレーションでクリックして頂ければ幸いです。と。
弟子:しょうがないなー。
師匠:ところでひとつ秘密を教えてやろうか?
弟子:なんです?
師匠:趣味を尋ねられた時に「実益を兼ねて」などと優等生的
回答をする人は実はそれが趣味じゃぁない。
弟子:というと?
師匠:本当は特に趣味はない。
弟子:うーん。わからなくもないような気はします。
師匠:逆に人に理解されないだろう趣味を持つ人はなんて答える
と思う?
弟子:さぁ……。
師匠:「いえ、特には……。」だね。